活動報告
ACTIVITY-REPORT

日田支部
広報委員会
(株)シンシアリー 代表取締役 平川加奈江氏(日田支部)・専務取締役 平川智也氏(日田支部) ・(株)井上酒造 代表取締役 井上百合氏(日田支部)

「育てる。そして喜びを分かち合い、称えあう」                                                                  ~農福連携による6次産業。“オール日田”で純米吟醸酒を限定で製造販売。~

(株)シンシアリー 代表取締役 平川加奈江氏(日田支部)
          専務取締役 平川智也氏(日田支部)
(株)井上酒造 代表取締役 井上百合氏(日田支部)

はじめに

父が創業した(株)財津製作所で働いていた平川氏ですが、次女が障がいを抱えていることもあり、2011年に障がいをもった方々の働き方を支援する会社(株)シンシアリーを設立し代表取締役に就任しました。(株)財津製作所からプレス金属加工や特殊溶接の仕事を請けながら、新たな取引先を開拓し順調に仕事を増やしてきました。今回は(株)井上酒造と連携して開発した、純米吟醸「夢かなえ」についてお話を伺いました。

酒米づくりで工賃向上を

(株)シンシアリーでは「工場作業が苦手な障がい者にもできる仕事を」と考えて、障がいの特性に合わせるため2013年から食用米作りを始めました。会社近くの休耕田を借り受けたのが始まりです。周囲では耕作放棄地が増え、離農者も増えていく中で、ますます耕作依頼が舞い込むようになってきました。米の販売は順調に伸びていますが、全体的には米の消費量は年々減り続け、高値での販売は難しく利益が出にくいです。状況ですでは? 上記の増えが重複しているのが気になります

そこで、平川氏は「酒米を作って酒にすれば、付加価値も高くなり売上になるのでは。それに地元の酒造会社に酒造りを頼めば、酒作りに必要な麹、米、水、人の全てがオール日田で揃う。障がい者が地域活性化の一役を担えるはず。障がい者の収入アップにもつながるのでは?」と考えました。

酒造りについていろいろな人に相談すると、みんなが口を揃えて「それなら(株)井上酒造が良いよ」と言います。縁もゆかりもなかった平川氏ですが、悩んだ末に井上氏へ直接電話をかけて相談しました。

酒造りの喜びを分かち合いたい

(株)井上酒造は1804年に創業。まだ女人禁制が当たり前とされた時代に利き酒師となって社長に就いた母から井上氏が受け継いだ酒蔵で、日本銀行の総裁や大蔵大臣を歴任し第二の渋沢栄一とも称された井上準之助氏の生家でもあります。今は東京で医師をしている娘の華子さんがいずれは後を継いで8代目になる予定で、そうなれば女性社長が3代続く珍しい酒蔵です。

酒米づくりの相談と醸造の依頼、作業に携わる社員の受け入れについて井上氏は、「今回のように酒米を持ち込んで酒造りを依頼されたのは初めてです。酒造りの相談をしていただいたことが嬉しくて、また、杜氏としても(株)シンシアリーの皆さんの夢実現のお手伝いができることを大変嬉しく思っています。私は地域の米を使ってこそ、本来の地酒だと思っています。だいたい酒米は買ってくるのが普通です。それを『酒米を育てたい』と言われた瞬間から、酒米づくりから酒造りまでの喜びをきっと分かち合えると思いました。共有して一緒に喜びたいと思いました。そこで蔵人とも相談をして、一緒に酒造りすることを提案しました。」と言います。

 平川氏は「もともとは酒米を作って『酒造りをお願いします』というつもりだったので、井上社長から『いつから入る?』と聞かれた時は驚きました。普通は嫌じゃないですか?入れてくれませんよね?」と、今でも当時の驚きさながらに語ります。

さらなる成長をめざして

井上氏は「できたお酒を私の師匠である熊本の香露―(株)熊本県酒造研究所に持って行くと、『酒米に生産者の顔が見える。この酒米を作った人は真面目に農業に携わっている人じゃないか?この酒米を酒にするのは難しいぞ。なぜなら肥料をあまり使わずに、草を引き抜く姿がこの酒から感じ取れる』と言うのです。師匠は今回の酒造りの全く背景を知らないのに…です。帰って平川氏に尋ねるとまさにその通りで、私たちは材料を作ってくれている人の顔が浮かぶような酒を、もっとしっかり勉強して造らないといけないと思いました。一番理想とする嬉しい言葉を師匠からかけてもらいました」と嬉しそうです。

また(株)シンシアリーで酒造りの中心役を担った智也専務は「仕事は下請けの作業が主で、決められた製品を作っていれば良かったのですが、今回は酒米づくりからお酒になるまで全てに関わったので、喜びでいっぱいです。朝はまず(株)井上酒造に出勤して、雑味の原因になるタンク周囲に付いた発酵したものをきれいに拭いたりしてから、会社に出勤していました。今回のチャレンジが社員の自信になり、一人ひとりの夢実現につながると思います」と自信を深めていました。

4月には広瀬大分県知事(当時)を平川氏と井上氏が揃って表敬訪問し、純米吟醸「夢かなえ」の完成を報告しました。障がい者の工賃向上と農福連携のお話をすると、広瀬知事からは「二人の女性で日田を頼むね。今後とも続けていってください」と労いと励ましの言葉をいただいとのことです。

今後は搾り後の酒粕を使ったお菓子作りも考案中とのこと。次の酒造りとあわせて楽しみが広がります。

< 企業概要 >
(株)シンシアリー
■設 立:2011年
■資本金:800万円
■社員数:18名
■業 種:障害者就労継続支援A型事業所えくぼ
グループホームふぁーすと
自立訓練(生活訓練)らいふスクール
障害者就労継続支援B型事業所ミニえくぼ
■所在地:〒877-1223 大分県日田市大字花月1407番地
■TEL:0973-27-7337
■URL:https://sincerely-co.jp/

 

(株)井上酒造
■創 業:1804年
■資本金:4,500万円
■社員数:15名
■業 種:清酒、焼酎、リキュールの製造・販売
■所在地:〒877-1107 日田市大字大肥2220-1
■TEL:0973-28-2211(代)
■URL:https://www.kakunoi.com/

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