活動報告
ACTIVITY-REPORT

別府支部
会員訪問 (株)両築 専務取締役 緒方 真美氏(別府支部会員)

■(株)両築の業種と創業について教えてください。

 (株)両築は別府と由布院にて旅館ホテルの経営を行っています。今年で30期を迎えます。父は大手ホテルの支配人をしており40代で独立をして今の会社の経営が始まりました。私はその2代目となります。別府にある両築別邸は耐震改修工事、高付加価値事業工事を経て、42室うち13室をプレミアムルームとしてより価値ある時間を過ごして頂ける部屋をご提供しております。

 由布院にある御宿 由府両築は築100年の古民家を移築しています、湯の坪街道の真ん中にある全7室の旅館です。

 当初、両親が由府両築を経営していましたが、両築別邸を始めたことをきっかけに、私たち夫婦が由府両築を引き継ぎました。由府両築での貴重な経験を活かして、今度は2社の経営に携わるようになりました。

■両築別邸の経営を引き継ぐにあたり問題はありましたか?

 御宿 由府両築は、築100年の大正時代に建てられた古民家を旅館として営業しています。暖かい接客をコンセプトに経営を行い、表彰も受け、予約の取れない宿と高評価を得ていました。しかし、両築別邸は中型のホテルであり色々と仕様が違っていました。お客様は主に旅行会社関係での団体様や個人のお客様で、宴会等も行っていました。入社当初は、両築別邸は特に評判も良いわけでもなく、接客レベルも低いものでした。そこで、従業員に私が接客について注意すると、長く勤めている自負もありぶつかり合ってもめて、分かり合えないと退職していく人もいました。そういう時期を過ごして、程なくしてコロナ禍がやってきました。

■コロナ禍でどのように変わりましたか?

 コロナ禍で旅行客は激減しましたが今思えば、自社と向き合える最高の時間を過ごせたと思っています。その期間行ったのが、宿のブランディングとマーケティング、SWOT分析ですね。自社の強み、弱み、脅威とかそういったものを全部分析しました。最初は国の助成金目的で始めた分析でしたが、進めて行く度にどんどん面白くなりました。自社の宿の口コミを一番書いている人はどんな人なのか、ターゲットの中で一番来て喜んでいる層は誰なのか、またクレームが出ている層は誰なのか、他社との競合に勝てない理由は、何なのかなど分析しました。その中でも、大きな気づきを教えてくれたのは、旅行サイトの担当者の「ここは子連れに評価が高いですよ」でした。わたしは「別府には他にも子連れが楽しめるホテルがあるじゃない?」と疑問に思い聞きました。担当者は「私の子どもは1歳半です、両築別邸のお部屋食が未就学児、赤ちゃん連れにはすごく有難いですよ。この広さ、規模も安心します」この言葉で、敢えて未就学児連れをターゲットにしたホテルに絞ってみようと思いました。丁度、自分の娘が1歳を迎えていました。旅行に行きたいけど、1歳児との旅行はすごく大変です。荷物も多い。そんな私が宿泊したくなるホテルの構想から今の両築別邸は生まれました。

 旅行会社の専用ページの再構築、写真の取り直し、未就学児連れが過ごしやすいイメージを全面にだし、SNS等で発信。使用していない客室、広間をキッズルームに簡易改装を行い、全室お部屋食対応を売りに、家族風呂やキッズルームをPRしました。以前の評価は3.8でしたが4.8や5になり、ブランディングが成功した、お客様にすごく刺さっていると思い完全に方向転換をしました。こどもに優しい宿をコンセプトにし、チェックインでのお子様にサプライズプレゼント。また、お母さんに一人でくつろいでもらうために、女性専用の岩盤浴。そして家族で過ごしてもらうために無料のカフェ、アルコールやノンアルコールを愉しめる湯上がり処を新設いたしました。もちろん食事の内容にも力を入れています。未就学児に無料でついてくる新幹線の形をしたお子様ランチは今でも弊社の人気のひとつです。子育て中のファミリーにとって一番嬉しいのは子供の笑顔です。子供が笑えば、私たちスタッフも嬉しくなる。自然と接客評価はどんどんあがりました。自分がしてあげたいと思った事が全て正解です。お客様にこれをしてあげたいと思ったら迷いなく実行する事。これが私の座右の銘です。その気持ちが従業員にも届いたのだと思います。

■今後についてどのように考えますか?

 現在、社員が約30名、パートが約70名います。業界的には離職率が高く、採用率が悪いです。そこで、今の社員の雇用を守ることと新卒の採用に力を入れています。外国人社員が8名います。彼らには永住権も欲しいとの意思があるので採用した外国人社員には一生安心して弊社で働いてもらえる環境を整備したいと思っています。また、福利厚生の向上にも動いています。会社の財務の透明化を図り、経費についてみんなで意識付けも行っています。また、評価制度の導入を考えています。評価制度はやる気につながるので、それを可視化できるように作り上げます。同友会では経営指針成文化セミナーに出席し、意識の高い方々に囲まれ、みなさんからアドバイスもいただけて本当にいい時間が過ごせたと思います。

 最後に、今いる社員を大事にしたいという思いがすごくあります。一人一人が必要とされている存在意義を自覚させ、努力し達成した分だけ平等に評価される。そのような会社の方向性を明確にする事で現在は離職率もかなり低くなっています。しかし社員の高齢化問題もあります。社員教育制度を作って、若い社員にどんどん活躍してもらい、パートさんが社員になりたいと思ってもらえるような会社にしていきたいと思っています。

《会社概要》
■所 在  地 別府市観海寺3
■創  業 1994年
■社 員  数 93名
■業務内容 別府温泉「美湯の宿 両築別邸」
      湯布院温泉「御宿 由府両築」を経営

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